資本金とは?
資本金とは、事業を円滑に進めるために、株主が会社に出資した金額のことです。会社を設立するにあたっての運転資金だけでなく、新規事業を立ち上げる際などに資金が必要になったとき、株主や投資家から調達した資金も資本金に分類されます。
ただし、株式上場を目指すケースなどのように、かなり有望な事業でない限り、創業時に出資を受けるのは難しいため、創業者が無理のない範囲で自己資金を投じることがほとんどです。
いずれにせよ、「資本金は事業を行なうための元手」と考えると分かりやすいでしょう。
資本金はいくらにすれば良い?
では、その資本金はいくらにすれば良いのでしょうか?
資本金額の決め方としては、主に以下の8つの観点があります。
- 会社法上の観点から
- 信用の観点から
- 運転資金確保の観点から
- 経営上の観点から
- 消費税の観点から
- 法人住民税均等割りの観点から
- 許認可・ビザ等の観点から
- 融資の観点から
会社法上の観点からは「資本金1円」でも問題ありませんが、信用の観点から考えると、資本金額が1円の会社は取引や融資の際に不利になることが予想されるため、資本金はできるだけ多く設定しておくのが賢明です。
とはいえ、資本金には「1,000万円の壁」というものがあり、999万円以下なのか1,000万円以上なのかで消費税の課税事業者になるか否かが決まります。
資本金を1,000万円以上に設定すると節税メリットは減少しますが、対外的な信用度は増すことが考えられます。
資本金決定時には様々な観点を考慮した上で、ステークホルダーとの関係性も反映させる必要があります。
1)会社法上の観点
会社法という法律上は最低1円から資本金を設定することが認められています。
(実際には1円で会社運営をすることは不可能なので、役員借入金が発生します。)
2)信用の観点
資本金とは純資産の部に計上される純粋な資産であり、借入金などを含めることはできません。
そのため、資本金が大きな会社=自己資産を多く保有していると考えることができます。
資本金とは会社の底力を示すものであり、社会的信用を計る基準でもあります。
会社の登記事項の中には資本金の額が含まれていますので、誰でも自由に見ることができます。
取引をしようとする場合や融資を受けようとする場合、相手の会社や金融機関は登記事項を当然確認するでしょう。
資本金の多寡が、融資を受けられるか否か、取引ができるか否かに影響する可能性も多いにありえます。
また、従業員採用の面でも、例えば資本金1円の会社が本当に給与の支払いをしてくれるのか?と不安になることもあると思います。
資本金は会社の信用度を決める重要な要素の一つでもあるため、慎重に検討する必要があります。
3)運転資金確保の観点
安定した売上がある個人事業主が法人成りする場合は別として、新たに会社を設立する場合は、設立当初は赤字になることも考えられます。
それでも会社の営業は続けなければならず、利益が出て事業が軌道に乗るまでの運転資金が必要です。
したがって、最低でも6ヶ月分程度の運転資金を用意しておくことがポイントとなります。
通常、会社設立当初の運転資金は資本金から出すことになりますので、最低限必要な資本金は「会社設立の際に設備投資などに要する費用+3~6ヶ月分の運転資金」と考えて良いでしょう。
4)経営上の観点
実際の会社設立の現場では、資本金を「いま準備できる金額」という考え方で決めることが一番多いです。
100~300万円が一番多く、最近は30万円、50万円という会社も増えてきました。
資本金の上限は「1,000万円未満」にすることをお勧めします。
なぜなら、資本金が1,000万円未満だと、消費税の納税義務が発生する「課税事業者」でなく、「免税事業者」となるからです。
詳細は次の見出しで解説していきます。
もし「消費税の納税義務が発生しても良いから、ステークホルダーとの関係性を考慮して資本金を1,000万円以上にしたい」という方がいましたら、それは勿論問題ありません。
実際に1,000万円以上の資本金額を設定している企業は多くありますし、「企業の信用度」を図る指標としても資本金は機能しますから、社会的信用を高められるメリットがあるといえます。
5)消費税の観点
先述したように資本金が1,000万円未満の会社は「免税事業者」となり、設立後2期目までは原則として消費税を納めなくて良いこととなっています。
会社設立時の資本金額が1,000万円以上になると「課税事業者」になるため、「会社設立初年度から消費税の納税義務が発生する」と覚えておきましょう。
ただし、インボイス制度の導入に伴い、課税事業者を選択する会社も増加しているため、取引先となるであろう相手や、事業形態も含めて資本金額を検討するようにしましょう。
6)法人住民税均等割の観点
会社設立時の資本金額に関連して、都道府県・市町村に毎年支払う法人住民税均等割という定額の税金があります。
資本金の額で税額が異なり、資本金が1,000万円を超えると年間18万円以上の負担増となります。
地方税のため都道府県によって異なりますが、資本金が大きいと、税負担も増加すると考えてよいです。
7)許認可・ビザ等の観点
事業によっては、所轄官庁の許認可を得なければならないものがあり、飲食店、ホテル、古本屋、貸金業、薬局、警備会社など、対象業種は多岐にわたります。
許認可が必要な業種の中には、建設業や職業紹介業、人材派遣業など、一定の資産があることを許認可の要件としているものがあります。
その他に資本金の額が影響するものに、許認可や役員のビザの問題などがあります。
例えば、一般労働者派遣事業を行なおうとする場合、2,000万円以上の資本金が必要ですし、それ以外の業種でも制約があるケースがあります。
また外国人の方で、投資経営ビザを取得したい場合は資本金500万円以上が必要となるなど、会社ごとの個別事情により資本金額を検討する必要があります。
まずは会社の事業内容や融資の有無などから資本金の適正額を検討してみてください。
8)融資の観点
金融機関は「貸し倒れリスク」を避けるため、融資する会社の資本金額を重要視します。
資本金の額が大きければ、出資者がそれだけリスク(覚悟)を負っている証明となるからです。
実際に、事業の立上げ時に最も利用される「日本政策金融公庫の新創業融資制度」では、自己資金の要件というものがあります。
これは、創業に必要な資金の3分の1以上は自分で用意する必要があり、残りの3分の2を申込み金額として申請することができるという要件です。